最高裁判所第二小法廷 平成3年(行ツ)169号 判決 1992年2月14日
東京都港区赤坂四丁目八番六号
上告人
ピー・エム・エー商事株式会社
右代表者代表取締役
今川忠雄
東京都港区西麻布三丁目三番五号
被上告人
麻布税務署長 佐藤清勝
右指定代理人
小山田才八
右当事者間の東京高等裁判所平成三年(行コ)第二七号法人税の重加算税の賦課決定処分取消請求事件について、同裁判所が平成三年五月二三日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 木崎良平 裁判官 藤島昭 裁判官 中島敏次郎 裁判官 大西勝也)
(平成三年(行ツ)第一六九号 上告人 ピー・エム・エー商事株式会社)
上告人の上告理由
東京高等裁判所はその判決に際し、国税通則法第六八条の適用につき、上告人の主張を全く受入れずに控訴を棄却した。よって再度上告人の行為が国税通則法第六八条にいう隠ぺい行為に当らないことを主張します。
東京高等裁判所の判決における棄却理由のうち
一.「控訴人は、控訴人代表者が、本件有価証券売却益の存在を失念していた旨主張するけれども……」とありますが、上告人代表者は有価証券売却益の存在を失念していた等とは一言も言っていません。売却益の存在は勿論知っていました。ただその売却益が昭和六三年三月末日までの事業年度中に発生していた事について明確な認識がなかった為に、麻布税務署調査官の質問に対し、「その期間に取引はなかったと錯覚して答えたのみで、何でこれが故意の隠ぺいに当たるのか、牽強付会も甚だしいと言わざるを得ません。何処に隠ぺいの事実があるのか指摘して貰いたいと思います。これこそ麻布税務署調査官が故意に隠ぺいをデッチ上げた事は明白で、悪意的な同調査官のやり方に対し忿懣やる方ない思いであります。どうして当初同調査官は期間中の取引の存在を素直に教示しなかったのか。証券会社との公正な取引であり、隠ぺいしようにも隠ぺいできないものを唯錯覚から「当期はありません」と答えた事のみをもって、鬼の首でも取ったように終始それだけを楯にとって「隠ぺい」とは、余りにも酷いやり方で、到底公僕としての公務員のやり方ではありません。
二.(上告人代表者は有価証券売却益を計上しないよう指示したことなど絶対にありません。この事を断言した上で述べます。)
「控訴人代表者が加藤税理士に具体的に右のような指示をしていないとしても、控訴人は、その委任を受けた税理士の隠ぺい行為について、その責めを免れるものではない。」と言っているが何故そんなことが言えるのでしょうか。また税理士は上告人代表者の指示も受けていないのに、どうして隠ぺい行為を行ったのか、また行う必要があったのかを問いたいが、何故か答えは簡単です。これは明らかに隠ぺいではなく、加藤税理士が単に有価証券売却益の存在を見落とした為に発生したものであり、同税理士は自己のミスを免れる為に指示を受けたと虚言を弄した事はここで明らかになる。即ち指示も受けていない事実を認め、隠ぺいの理由もない現実から、どうして同税理士の行った隠ぺい行為と言えるのか。東京高等裁判所の判決は語るに落ちたと言うべきで、どうしてこれ程簡単な論理を、敢て飛躍しようとするのか。また小生は浅学の為よく理解できませんが、委任を受けた税理士がミスを犯したとき、上告人の意思ではないにも拘らず、すべて上告人が責めを負うべきとは考えられません。
また、税理士が、納税者の指示もないのに、勝手に隠ぺい行為を行った場合、税理士としての責任は全くないのかを問いたい。もっとも本件の場合税理士は隠ぺい行為を行ったのではなく、ミスを犯したものであることを付け加えておきます。
以上、上告人の行った行為が、国税通則法第六八条にいう隠ぺい行為に当たらないことを心から信じています。
公正なご判断をお願い致します。
以上